目次
- 1960年
- G.I.ブルース(G.I. Blues)
- 燃える平原児(Flaming Star)
- 1961年
- 嵐の季節(Wild in the Country)
- ブルー・ハワイ(Blue Hawaii)
- 1962年
- 夢の渚(Follow That Dream)
- 恋のKOパンチ(Kid Galahad)
- ガール!ガール!ガール!(Girls! Girls! Girls!)
- 1963年
- ヤング・ヤング・パレード(It Happened at the World's Fair)
- アカプルコの海(Fun in Acapulco)
- 1964年
- キッスン・カズン(Kissin' Cousins)
- ラスベガス万才(Viva Las Vegas)
- 青春カーニバル(Roustabout)
- 1965年
- フロリダ万才(Girl Happy)
- いかすぜ!この恋(Tickle Me)
- ハレム万才(Harum Scarum)
- 1966年
- フランキーandジョニー(Frankie and Johnny)
- ハワイアン・パラダイス(Paradise, Hawaiian Style)
- カリフォルニア万才(Spinout)
- 1967年
- ゴー!ゴー!ゴー!(Easy Come, Easy Go)
- ダブル・トラブル(Double Trouble)
- ブルー・マイアミ(Clambake)
- 1968年
- ステイ・アウェイ・ジョー(Stay Away, Joe)
- スピードウェイ(Speedway)
- バギー万才(Live a Little, Love a Little)
1960年
G.I.ブルース(G.I. Blues)
除隊後初となる2年ぶりの映画。この映画からカラーとなる。
ドイツに駐留している米軍の戦車機銃兵の役で、もみあげはなかったが髪は兵隊としては長かった。徴兵で駐屯していた西ドイツが舞台で、11曲を歌いまくる。
大人っぽい落ち着きがあり、エルヴィスが変わったのは明らかだった。ハリウッド・レポーターはエルヴィスがひどく健康的になったことに驚き「彼の血管にはハチミツが流れているようだ。これではもうからないだろう」と書いたが、予想を裏切ってハリウッド史上に残る高収益作品のひとつとなった。
燃える平原児(Flaming Star)
シリアスな役を望んでいたエルヴィスが、人種問題を扱った悲劇の物語に挑んだ。
1870年代テキサスが舞台で、インディアンと白人の混血の役。歌ったのは冒頭の主題歌と家族団らんの中で歌う計2曲だけで、中盤以降は笑い顔も全く見られないというストーリーで役者としてまずまずの評価を受けた。
Flaming star(輝く星)は「インディアンは死を迎える時に輝く星を見る」という言い伝えからの言葉で、母親が死を悟った場面と最後にエルヴィスがインディアンと戦うために一人で町を出ていく場面で使われている。
1961年
嵐の季節(Wild in the Country)
田舎育ちで教養がなく、短気であるが才能ある小説家志望の青年という役。当時売れっ子の3人の女優にエルヴィスがからんでいくストーリーで、「燃える平原児」に続くシリアスな内容。
歌はオープニングとエンディングに流れる主題歌と劇中に軽く3曲歌うのみ。この頃のエルヴィスは本格的な映画俳優をめざしていた。
ブルー・ハワイ(Blue Hawaii)
軍隊から復員した金持ちの息子が父親の会社に入らず旅行代理店で働く(ガイドとして独立)という役。
ストーリーは大したことないが、美しいハワイを舞台にエルヴィスが甘い歌声で歌いまくるという「エルヴィス映画」の原型となった一作。オープニングで流れる「ブルー・ハワイ」を初め全14曲が歌われた。ホリディ・シーズンに公開され大きな売上をあげた。サントラ盤もよく売れた。
日本でもハワイアン・ブームがおこり、海水浴場では「ブルー・ハワイ」が定番となり、ハワイでの結婚式ブームのはしりとなった。豊かな自然、小さなローカル空港、高層ホテルのないワイキキビーチなど、1960年代初めのハワイの風景が映画の中に残っている。
1962年
夢の渚(Follow That Dream)
フロリダを舞台に、生活保護を受けている父と傷病手当をもらっているエルヴィス、養女など6人一家が海岸に住み着きトラブルを起こしていくというコメディ。エルヴィスは天然ボケの役でいい味を出している。軽快でのんびりした味の「いかす生活」をバックに始まり、劇中4曲歌う。主題歌「夢の渚」は乗りの良い曲だが、何故か浜辺に寝転がって歌っている。
恋のKOパンチ(Kid Galahad)
ボクサーに扮し、なかなかのファイト・シーンを披露した。歌は6曲歌った。
セコンド役でチャールズ・ブロンソンが出演している。
ガール!ガール!ガール!(Girls! Girls! Girls!)
舞台は大ヒット作「ブルー・ハワイ」と同じハワイに戻っての作品。タイトルのイメージと違って、昼は釣り船の船長、夜はナイトクラブの歌手という役で、父の形見のヨットを取り戻すために苦労するというまじめなストーリー。13曲歌い、「心のとどかぬラブ・レター」はシングルで100万枚売れた。
1963年
ヤング・ヤング・パレード(It Happened at the World's Fair)
シアトルで当時開催されていた世界博覧会を舞台に、便利屋のパイロット役。中国系の少女とからみながらストリーは進んでいく。新しい歌を10曲歌った。「破れたハートを売り物に」はプロモーションのため映画に先立って発売され、シングルで100万枚売れた。
アカプルコの海(Fun in Acapulco)
メキシコの観光名所・アカプルコを舞台に、アメリカでの事故以来高所恐怖症となった空中ブランコ芸人が、名物の断崖からの飛び込みに挑むというストーリー。物語の筋立てがしっかりしていて、陽光きらめくアカプルコというロケーションもよく、11曲の歌も映画を盛り上げている。
大ヒットした「ボサ・ノヴァ・ベイビー」をはじめ、ラテン・テイストの曲がつまったアルバムはゴールド・レコードとなった。
1964年
キッスン・カズン(Kissin' Cousins)
早撮り映画で知られたサム・カッツマン制作。低コスト、短期間の作製でも十分な興行収入を得たためパーカー大佐が味をしめ、以後のエルヴィス映画の質低下につながっていく。初めての「一人二役」で黒髪のエリート空軍少尉と金髪の山男を演じ分けた。挿入歌9曲は一晩でレコーディングされたが、主題歌「キッスン・カズン」はゴールド・レコードとなっている。先に撮影されていた「ラスベガス万歳」より早く封切られた。
ラスベガス万才(Viva Las Vegas)
歌の得意なレーサーを演じた。興行的には最も成功した映画で、すべてがロケーション撮影で、予算も時間もそれなりにかけて制作された。
エルヴィスの映画の中で最もミュージカル的で歌と踊りが満載され、テンポよく最後まで飽きさせない。相手役のアン・マーグレットも評判になった。
青春カーニバル(Roustabout)
ホンダのバイクで放浪する喧嘩っ早い歌手という役。ラスベガス万才とがらりと変わり、ワイルドな青年という設定も曲のアレンジも1950年代に戻ったような雰囲気の作品。11曲歌い、シングル・カットはなかったが、アルバムはミリオン・セラーとなった。
1965年
フロリダ万才(Girl Happy)
クラブのエンタテイナー役で、雪降るシカゴからフロリダに休暇に行くオーナーの娘の監視役として付いて行くという観光地シリーズ。11曲を歌い、「スイムでいこう」がシングル・カットされた。
いかすぜ!この恋(Tickle Me)
歌うロディオ・ライダーの役で、美女たちと秘宝捜しに出かけるというコメディ。弱小映画会社作製の費用を抑えた映画で、9曲の挿入歌が全て既存のもの。それでも十分な収益があり瀕死の映画会社を救ったという。
ハレム万才(Harum Scarum)
早撮りのサム・カッツマンによる2作目。架空の中東の王国を舞台にした冒険ミュージカルで9曲歌っているが、撮影日数は18日、制作費の節約がわかる貧相な内容だった。「キッスン・カズン」ほどは収益が上がらなかった。
1966年
フランキーandジョニー(Frankie and Johnny)
19世紀のミシシッピを舞台に賭博師に扮した。ストーリーは相変わらずだが、歌は11曲あり、南部をイメージさせるサウンドがいっぱいで楽しい。
ハワイアン・パラダイス(Paradise, Hawaiian Style)
「ブルー・ハワイ」の作り直しのような映画。航空会社のパイロットに扮した。やはりストーリーは他愛ないが、空撮を多用し、ハワイの美しい景観を堪能できる。歌は9曲。
カリフォルニア万才(Spinout)
歌うカーレーサーにきれいな女の子がからむというおなじみのパターン。歌は9曲。
1967年
ゴー!ゴー!ゴー!(Easy Come, Easy Go)
海軍の潜水工作員という役で、沈没船の宝を探すというストーリー。低予算の作品で歌は6曲。
ダブル・トラブル(Double Trouble)
ロンドンのクラブ歌手という役で、舞台はヨーロッパだが撮影はスタジオ。オープニングはこれまでと違った雰囲気で期待させるが、内容は相変わらず。歌は8曲、そのひとつに童謡「オールド・マクドナルド」をアレンジして歌ったものがある。24作目の映画だが、初めて日本未公開となった。
ブルー・マイアミ(Clambake)
石油会社の御曹司という役で、それがいやで家出して水上スキーのコーチと入れ替わるというストーリー。歌は7曲。これまでと同じような映画のひとつ。
1968年
ステイ・アウェイ・ジョー(Stay Away, Joe)
アリゾナのインディアンの放蕩息子を演じたはちゃめちゃなコメディ。劇中では3曲歌っている。日本未公開。
スピードウェイ(Speedway)
何度目かの歌を歌うカー・レーサーという役。内容はこれまでと似たようなもの。フランク・シナトラの娘ナンシー・シナトラが相手役だった。6曲歌い、ナンシー歌も1曲あった。
バギー万才(Live a Little, Love a Little)
2つの会社を掛け持ちするカメラマンという役のコメディ。それまでの映画と違って、汚い言葉を発したり、女性とベットを共にした後の場面などがあった。歌は3曲。
TVカムバック・スペシャル直前の引き締まったエルヴィスを観れるが、日本での上映は不人気のため1週間で中止となった。