目次
- 1954年
- ザッツ・オール・ライト(・ママ) (That's All Right (Mama))
- ブルー・ムーン・オブ・ケンタッキー(Blue Moon of Kentucky)
- 今夜は快調!(Good Rocking Tonight)
- 1955年
- 忘れじの人 (I Forgot to Remember to Forget)
- ミステリー・トレイン(Mystery Train)
- 1956年
- ハートブレイク・ホテル (Heartbreak Hotel)
- アイ・ウォント・ユー、アイ・ニード・ユー、アイ・ラヴ・ユー (I Want You, I Need You, I Love You)
- 冷たくしないで (Don't Be Cruel)
- ハウンド・ドッグ (Hound Dog)
- ブルー・スエード・シューズ (Blue Suede Shoes)
- ラヴ・ミー・テンダー (Love Me Tender)
- 1957年
- トゥー・マッチ (Too Much)
- 恋にしびれて (All Shook Up)
- テディ・ベア ((Let Me Be Your) Teddy Bear)
- 監獄ロック (Jailhouse Rock)
- 1958年
- 思い出の指環 (Wear My Ring Around Your Neck)
- 冷たい女 (Hard Headed Woman)
- トラブル (Trouble)
- アイ・ガット・スタング (I Got Stung)
- 1959年
- フール・サッチ・アズ・アイ ((Now and Then There's) A Fool Such as I)
- 恋の大穴 (A Big Hunk o' Love)
1954年
ザッツ・オール・ライト(・ママ) (That's All Right (Mama))
1954年7月にサン・レコードで録音された歴史的な意味を持つエルヴィスのデビュー曲。原曲は1946年に初録音されたリズム・アンド・ブルース。
白人のカントリー音楽と黒人のリズム・アンド・ブルースのサウンドを統合した新しいスタイルで、ロックンロールが誕生した曲とされることが多い。メンフィスで評判となり、やがて全米へと広がっていった。
スコッティ・ムーアのギターとビル・ブラックのベースによるシンプルでビートの効いたサウンドに乗って、エルヴィスがギターをかき鳴らしながら甘い歌声で感性を溢れさせている。初期のエルヴィスのバンドはアコースティック・ギターとウッド・ベースのみでドラムはなかった。
ブルー・ムーン・オブ・ケンタッキー(Blue Moon of Kentucky)
「ザッツ・オール・ライト」のB面で、これこそロックンロールが誕生した曲だとする人も多い。原曲は1946年にビル・モンローが書いたゆったりしたワルツだが、エルヴィスはアップテンポの4拍子のリズムでブルースっぽい曲に仕上げた。拍子の変更に伴って歌詞も少し変えている。
「ザッツ・オール・ライト」が黒人のリズム・アンド・ブルースを白人が歌ったのに対して、この曲は白人の曲をリズム・アンド・ブルースのフィーリングで歌ったことに大きな意味がある。
エルヴィスのブルー・ムーン・オブ・ケンタッキー(YouTube)
今夜は快調!(Good Rocking Tonight)
サン・レコードから発売された2枚目のシングル・レコード。このレコードはビルボード誌で大きく取り上げられ、エルヴィスは「叩き込むように歌う新しい歌手」で、カントリー、リズム・アンド・ブルース、ポップスのいずれの分野にもアピールする力を持っていると評された。
リズム・アンド・ブルースのヒット曲だが、完全にエルヴィス流に仕上がっている。
1955年
忘れじの人 (I Forgot to Remember to Forget)
サン・レコード最後となる5枚目のシングル。初めて全米で1位となった。シンプルなカントリー・ソングだが、スコッティ・ムーアのスチール・ギターをバックに、悲しげなエルヴィスの声が響く。
ビートルズや若き日の加山雄三など多くのミュージシャンがカバーしている。
ミステリー・トレイン(Mystery Train)
「忘れじの人」のB面の曲。チャートでは10位までだったが、多くのミュージシャンが名曲として取り上げている。映画「エルヴィス・オン・ステージ」ではオープニングを飾る。
エルヴィスのリズム・ギターを存分に味わえる非常にシンプルだが味のあるロックンロール。
1956年
ハートブレイク・ホテル (Heartbreak Hotel)
RCAビクター移籍後の第一弾で、エルヴィスの名声を決定的にした曲。サン・レコードでの独創的なサウンドとはまた違う、ゆったりとしたバラード。ピアノも加わり、よりポップに向かった別の新しいサウンドに変化している。いきなりエルヴィスの歌から始まり、この頃めずらしかったエコー(鉄板などを使ったアナログなもの)を強く効かせ、時として井戸の底で声を張り上げているようだったり、例のシャックリのような不明瞭な発音部分もあったりする。
エルヴィスが勝手に採用を決めたためパーカー大佐は嫌っていたが、仕上がった曲を聴いてエルヴィスの才能を再認識したという。
アイ・ウォント・ユー、アイ・ニード・ユー、アイ・ラヴ・ユー (I Want You, I Need You, I Love You)
RCAより発売されたシングル第2弾。21歳のエルヴィスが激しく、優しく、情熱的に歌う、心に響く曲。この時期のエルヴィスだから出せた味のあるバラード。
アイ・ウォント・ユー、アイ・ニード・ユー、アイ・ラヴ・ユー(YouTube)
冷たくしないで (Don't Be Cruel)
次の「ハウンド・ドッグ」とカップリングの曲だが、両曲ともヒットしたため両面A面扱いされている。ハウンド・ドッグと合わせて連続11週チャート1位となった。
ベースのリフで始まって、ジョーダネアーズのドゥー・ワップをバックにした、軽快でシンプルでありながらエルヴィス独特の味がある。一瞬のブレイクをおいてサビに入るエルヴィス独特の歌い方が心地よい。
ハウンド・ドッグ (Hound Dog)
「ハート・ブレイク・ホテル」と並ぶエルヴィスの代表曲。この年の年間ランキングで1位となった。当時のステージではこの曲を歌わないと客の騒ぎが収まらなかったという。
後にカムバックしてからのステージでも必ず取り上げている。元は1952年の女性歌手によるブルース。
ブルー・スエード・シューズ (Blue Suede Shoes)
サン・レコードからカール・パーキンスが発売し100万枚以上売り上げたロカビリー曲。カナダと英国ではシングル発売され、「ハート・ブレイク・ホテル」と同程度のヒットとなった。
エルヴィスは全米TV放送でこの曲を披露し、チャートではパーキンスに及ばなかったが、一般にはエルヴィスの方が有名となった。
ラヴ・ミー・テンダー (Love Me Tender)
同名映画の主題曲で、非常にシンプルなラブソング。映画公開2ヶ月前のTV出演時に披露したところ、100万枚を超える注文が殺到した。「ハウンド・ドッグ」「冷たくしないで」に続いてチャート1位となり、夏から12月までエルヴィスが1位を独占した。結局1956年の半分近くはエルヴィスが1位だった。
誰でも聴いたことがある、誰でも歌える曲だが、シンプルすぎて誰もエルヴィスのようには歌えない。
1957年
トゥー・マッチ (Too Much)
ミディアム・テンポの軽快なロック。1月、3回目のエド・サリバン・ショーで初めて披露された曲。RCAからデビューして1年足らずで8枚目のミリオンセラーとなった。
恋にしびれて (All Shook Up)
4月から8週間連続1位となったミディアムテンポのソフトな曲。「冷たくしないで」と同じオーティス・ブラックウェルの作で、前年に別の歌手でレコーディングされたが不発で、エルヴィスにより大ヒットとなった。
多くのアーティストがカバーしており、その中の一人ポール・マッカートニーは「いつ聴いても幸せになれる曲」と語っている。
テディ・ベア ((Let Me Be Your) Teddy Bear)
映画「さまよう青春」の主題歌「ラヴィング・ユー」のB面に入っていた曲で、7週間1位となった。「君のテディ・ベアになりたい」と少し切ない声でテンポよく歌う。
エルヴィスが映画撮影の前に「テディ・ベアが大好き」とインタビューに答えたところ、ファンから大量にテディ・ベアを送られてきた。それを見た映画会社があわてて作らせて挿入歌にしたとの逸話がある。
監獄ロック (Jailhouse Rock)
エルヴィス3本目の主演映画「監獄ロック」の主題曲。映画公開前の発売と同時に爆発的な大ヒットとなり7週連続で1位となった。
印象に残るカッコいいイントロで始まるエルヴィスの代表曲のひとつ。
1958年
思い出の指環 (Wear My Ring Around Your Neck)
21枚目のシングル。印象的なイントロから始まってテンポよく軽やかに、そして息つく暇もなく間奏なしでスリリングなサビへと縦横無尽に歌い上げる。
冷たい女 (Hard Headed Woman)
映画「闇に響く声」の挿入歌。映画の舞台はニューオリンズで、ディキシー調のオーケストラをバックにした軽快なロックナンバー。
入隊中に2位までチャートインしたミリオンセラー。
トラブル (Trouble)
映画「闇に響く声」の挿入歌。シングル・カットはないが、68年TVスペシャルのオープニングに使われた。
ニューオリンズ・ジャズ風の管楽器をバックにエルヴィスがシャウトする。途中テンポが上がってロックンロールぽい終わり方をする。
アイ・ガット・スタング (I Got Stung)
エルヴィス独特の音程を急激に上下させる歌い方が特徴的な軽快な曲。入隊後に発表された。
この時期からはストックの曲がないため、6月の休暇中に一夜で録音された曲が小出しにされていく。
1959年
フール・サッチ・アズ・アイ ((Now and Then There's) A Fool Such as I)
3月に発売された。オリジナルは1952年発表のカントリー・ソングで様々なアーティストによるカバーがある。
エルヴィスのものが最もヒットし、ミリオンセラーとなった。
恋の大穴 (A Big Hunk o' Love)
入隊後、最後の未発売曲で6月に発売されミリオンセラーとなった。テレビもコンサートも2年間ご無沙汰だったが人気は落ちていなかった。
エルヴィスの声に、ピアノとギターがからむロックンロール。